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「全く、懲りねぇなてめぇも」
「お前もしつこいねぇ」
一気にその場が険悪になる。俺と奴の間に挟まれて、赤くなったり青くなったりしている彼女に俺は助け船を出した。
「ごめんね、逃げていいよ」
ハッとした彼女は涙目になりながらも、小さな声で「ごめんなさい!」と言いながら、廊下へと飛び出していった。
あーあ、逃げられてしまった。いいとこだったのに。それもこれもコイツのせいだ。
「ったく、女の子泣かせるとかさすがだね。鬼の風紀委員長、神原祐史」
「泣かせたのはお前だろーが、朝倉千春」
「泣かせてねぇよ。鳴かせる予定だったけど」
「オヤジくせぇんだよハゲろ」
忌々しげに神原が言う。
「ハゲませーん。オヤジくさいと思うヤツがオヤジくさいんだよお前がハゲろ」
「あ?」
ガキみたいな言い合いだと自分でもわかってる。
こんなの全く俺のガラじゃないんだ。俺はもっとこう、いつも品があって紳士でフェロモン漂う余裕ある男なんだ。
「だいたいお前のその頭髪、余裕でアウトなんだよ。金髪とかなめてんのか。ちょうどいいからここで潔くハゲろ」
金髪ではない。ブロンドだ。これだからおしゃれのわからない奴は。
「はあ?ハゲに潔いも何もないだろ。あるのはバーコードか否かだけだ」
「それを往生際が悪いっつーんだよ。そんなサイドの髪でてっぺん隠そうたってうまくいかねぇわ」
「んだと?失礼しちゃうなホント。全国のバーコードハゲに謝れ。足掻いて何が悪い、カモフラ上等だコラ」
「カモフラできてねぇんだよ。つかお前が言い出したんだろーが!」
「…待って。じゃあ波平は?あれ波平は潔いの?だいぶ豪快にいっちゃってる点は評価高いけど、あのてっぺんの一本がカモフラっちゃカモフラに…」
「なってねぇよ!?評価ってなんの評価だ!
…もういい。お前風紀委員室まで来い」
「はぁ?ヤダよ…ちょ、離せよハゲ!」
「ハゲてねぇ、…いいから来い!」
…お察しの通り、俺とコイツはいわゆる犬猿の仲ってやつです。
わたくし、朝倉千春はー神原祐史をー憎んでいます!世界中の誰よりも!
え?南ちゃん何、もっかい言ってって?…10年後でも何年後でも言ってやんよ!
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