新月

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月のキレイな夜だから もう泣かないで love songから流れるフレーズに 今も まだ胸をつく切なさ いつになれば 思い出に 変えることが出来るんだろう 『いつも お疲れ様です もし良かったら 愚痴でも何でも聞きますよ 負けんな』 そんなメッセージと共にメアドが 書いてあった 半年前 急に辞めた同僚 この ご時世なのに小さな会社には 求人の応募も虚しく新しい人が来ず 1人で事務をしていた柚月に取引先の 安原からの突然のメッセージだった 安原の会社とは日に2回 品物の やり取りがあり、彼は その会社の担当 同い年の気安さもあり 仕事以外の話も よくする関係 事務を1人でこなしながらも当初は 新しい人が来ると思っていた柚月は ハローワークからの鳴らない電話に 不安を通り越して苛立ちを感じ始めていた 小さな会社で薄給 業界的に祝日も出勤 柚月には問題とは思えなかったが 求人の募集に かかってくるのは 年齢制限を超えた人からの問い合わせのみ 「もぅ そろそろ限界じゃけん」 そう つぶやくと 安原は フッっと笑い 「負けんなや」 そう柚月を励ましてくれた そんな彼の言葉に 元気を貰っていた柚月は 安原からのメッセージカードをみて 小さなトキメキも感じていた 飴の入った袋に 無造作に付けられた 真っ白いメッセージカード 事務をしているのは柚月1人だからか 伝票の入った封筒に それらは入っていた 朝の伝票整理の際に それに気付き 頬が緩くなるのを自覚しつつ貰った飴を 口に放り込み 黙々と仕事をこなす 甘酸っぱい飴は 疲れた心を癒し 休憩時間に安原にメールをしようと 思うだけで驚くほどに仕事がはかどった 休憩時間 LINEをし始めて以来メールなんて しなくなっていたのでドキドキしつつ 安原にお礼のメールをした 休憩が終わり事務所に戻った途端に メール着信『もぅ飴食ったん? 早っ』 先程メールを送ったばかりの安原だった 休憩は終わっていたがコソコソと 返信を打ち返す 「マジ美味かったけぇ あの飴~ なんじゃろ 太陽の味がした~」 『はぁ? わけわからんのぉ まぁ 美味かったんなら良しとしよぉ あんま無理すんなよ』 日常に日が射した瞬間だった
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