セオドア・マクラーレン

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「…確かに私でさえ感じてました。獅子王様の死後、ダグラス王国が荒れ果てていっていることを。」 その言葉にクリストファーは瞬きを繰り返した。頬が緩み、少年らしい笑顔が浮かぶ。 「だろう?勇敢で聡明なダニエル様なら絶対この国を変えてくれると思うんだ。ダニエル様はお優しいからあのクズ女に遠慮してらっしゃるけど、この国の本当の王にいつかはなってもらうんだ。」 それはブラウン家の方針かと訪ねようと思い、クリストファーの表情をみてセオドアは押し黙る。 目は太陽のように燃え、頬はバラ色に輝く。なんて美しい顔をしているのだろうか。 「ダニエル様を慕われているのですね」 ゆっくりとクリストファーの顔が驚きから困惑に変わる。そして真顔に戻るとくっくっくと小さい笑い声があがる。 「他人事のように何を言うんだよ。お前だってダニエル様のことを好きじゃないのか。」 冷たい手で心臓を掴まれたような気がした。 たった今あったばかりの人を好きになることなんてあるだろうか。なんて馬鹿馬鹿しいんだろう。 しかし、クリストファーの言葉を否定できない自分にセオドアは驚き声もだせない。 クリストファーはセオドアを笑顔で見ていた。しかしその目線は笑ってはいない。 「…少なくともお前がダニエル様に危害を加えないことはわかった。お前の気持ちは気に食わないけどしょうがない。」 クリストファーは目線は変えずにゆっくりと顔を扉へ向ける。 「お前は“与えられたもの”だ。ダニエル様への恩返しのためにその能力を使え。」 所詮子どもの言うこと。生意気で無責任で流しておくようなこと。 でもクリストファーの真剣な声を聞くとセオドアの気持ちも引き締まった。 クリストファーはクリストファーなりに気を巡らしブラウン家跡取りとしての責務を果たそうとしているのだ。 それがいじらしい。 最初にあった嫌な雰囲気はもう感じとれなくなっていた。 「ダニエル様の元へいく。そこにあるブランケットを持っていくぞ。」 セオドアは無言でブランケットをつかむと歩きだしたクリストファーを追って歩きだした。
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