獅子王の統べる国

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“古今東西、老若男女 信じられぬこと多けれど 獅子王様ほど強気ものなき その剣は闇をも切り裂き その矢は千里も走るなり 小さきお姿なれども 男も驚く大力無双” 子どもたちはこのわらべうたを口々に唱え、走りまわっている。 城下は毎月の日曜市で賑わい、着飾った人々で溢れかえる。大きな外国の船が珍しい品をたくさん載せて港に到着する。あるものは音楽を奏であるものは歌い踊る。この平和も獅子王様のおかげだと人々はこの国の王を口を揃えて讃えるのだ。 「陛下、今日も城下は大盛況でございます。我が国の金の輸出も増え貿易も大黒字です。」 ひげを蓄えた商人が嬉しそうに報告する。 謁見の間は天井が高く日の光がよく差し込む。控えめなステンドグラスが窓に埋め込まれておりまるで教会のような雰囲気である。 若き王は優雅に微笑みゆっくりと頷いた。 獅子のように明るくまっすぐな金髪がふわりと宙を舞う。金のまつ毛に縁取られた青い目が優しく細められた。 「お前にこの港を任せてよかった、ドレスデンよ」 耳朶を打つ低い声は労わりの気持ちに満ち溢れていた。 ドレスデン男爵は感激のあまり震える。 「陛下の世になってからこの国は明るくなりました。」その言葉に王は小さくうなずく。 栗色の巻き髪に透き通るような白肌の少年が盆に金でできた宝剣を載せて運んでくる。 その豪華さにドレスデンは目を輝かせた。 「王都パールズベイの金細工技術の高さが分かろう。今日は褒美にこの剣を取らせようぞ。 これからも励め」 王のとても17歳には見えない堂々たる気品に圧倒されドレスデンは恭しく宝剣を押しいだいた。 「ドレスデン男爵といったら、帰り際に何度も何度もダニエル様は男の中の男だ、かっこよすぎるなどとおっしゃって感激されてましたよ。」 「…まぁ、私と話せばそう思うのも無理はないさ」 獅子王、ダニエルは苦笑する。 「巷では10年にもおよぶ内戦を急に現れた王の隠し子が一瞬で納めた話で大盛り上がりです」 「…隠したというより捨てたのだ」 そう言いながらダニエルは立ち上がる。 小姓クリストファーと同じぐらいの身長なのにその身体は細かった。 「女を」 さみしそうにダニエルがつぶやく。 思わずダニエルの剣だこのできた褐色の手をとったクリストファーを見てまたダニエルの口からため息をが漏れた。
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