人を思い行動すること

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アルベルト・フーバーはダニエルの姿を見ると一言も話さず降伏してしまった。デンスの民はそんな領主の姿にあっさりダニエルたちを迎え入れた。 ダニエルたちは城の応接間に通された。王宮とは違うシンプルな作りは物が少なく殺風景であった。 アルベルトは眉間に深いしわを寄せてじっとダニエルを見つめている。狩猟民族らしい大柄な身体に色黒な肌は近づきがたい印象を与える。 「…お顔を見せてください」 アルベルトの雰囲気にのまれなかなか顔を上げないダニエルに焦れたのか、アルベルトがダニエルの肩をつかんだ。だが、肩に触れた瞬間、ぱっと手をどける。ダニエルのさらさらの髪がふわりと宙に浮かんだ。 「気安くダニエル様に触れるな。お前は逆賊であるぞ!本来ならば…」 クリストファーが吠えるのをダニエルが制した。 「フーバーの処分は追って決定する」 「ダニエル様…」 会話を聞いていなかったかのように小さくアルベルトが名前をつぶやく。ダニエルの全身を舐めるように見るとその瞳は熱に浮かされたように揺れていた。 ※※※ デンス自治区討伐から数日後。 ダニエルの元にはエドワードの名前の入った書簡が届くようになった。それは各地の紛争を治めるようにとの命令であった。 デンスの民を支配下に入れたダニエルは西へ東へと奔走した。半年も経つ頃には20の地域を平定していた。ダニエルを慕う少数民族を増え始め、ダニエルの軍は100万に膨れ上がっていた。 実際の軍事はアルベルト・フーバーが担った。作戦をセオドアが考え、情報収集はクリストファーがブラウン家の財力を用いて行う。 紛争も落ち着き終焉が見え始めた頃、エドワードがダニエルとアルベルト・フーバーを城に招いた。
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