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「馴れ馴れしすぎはないか、クリストファーブラウン。身分をわきまえろ」
クリストファーは優雅な騎士の礼をする。
「無粋な行動で不快にさせてしまい、失礼しましたフーバー卿。私とダニエル様は乳兄弟なのですから、つい…」
表情はにこやかだが目は笑っていない。
「小姓のくせにでしゃばるな」
「私も一応子爵の端くれですが」
アルベルトとクリストファーは無言でにらみあう。
その静寂を切り裂くようにこぽこぽと場違いな音が響いた。
「うるさい方々は置いておいて10時のお茶にしましょう、陛下」
いつの間にかテーブルにはティーセットが置かれ、銀髪にメガネの青年が涼しげな顔でお茶を注いでいた。全身を黒いローブと手袋で覆っているがフードからのぞく肌は不健康すぎるほど青白い。
「ドレスデン男爵からの献上品です。東の国から来たウーロン茶なる珍しいお茶だと」
メガネの奥から覗くのはミステリアスな赤い目である。
「なんだか分からぬがすごそうだな!さすがセオドアは目利きだ」
「なんと耳かきいっぱいで金二袋だそうです」
ちょっとやそっとでは驚かぬアルベルトもさすがに瞠目した。
「すごいなぁ、私にも一杯淹れて!」
クリストファーは満面の笑みを浮かべてセオドアの隣に立つ。
「やはり平民は金の亡者だな」
「そうはいいつつ気になっているのだろう、アルベルト」
にやにやと自分を見つめるダニエルにアルベルトは眉間にシワをよせて黙り込んだ。
セオドアは温まった茶器のお湯を捨てるとポットを回しながらカップに注いでいく。ウーロン茶独特の濃厚な花のような香りが広がった。
「そんなにフーバー様を困らせてはいけません、ダニエル様」
アルベルトの前にもカップを置きながらセオドアは母が子を諭すように優しくダニエルをたしなめる。
「腹黒軍師がそう言うんじゃ仕方ないな」
「だれのことでしょう?私はこんなに純粋なのに」
カップを前に集まった4人は自然と和やかな雰囲気になっていた。
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