手をひいてくれるのは

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でもまわりのベトナム人たちは バイクの波を一歩一歩、ゆっくりと慣れた様子で渡っていく ビーサンで旅慣れたバックパッカー風の欧米人も 器用に通りを渡っていく 綾子はガイドブックで下調べした、 ホアンキエム湖が見渡せるベトナムコーヒーのカフェに行きたい そのためにはこの大通りを渡るしかない 目の前のバイクの洪水に 鳴らしたい放題のクラクションの音 クラクラとする熱帯の太陽 そんななかを バイクの波を器用に車が走っていく 時たま、通る普通の自転車 座席フロントに観光客をのせた、 ”シクロ”と呼ばれる自転車までその波を乗りこなす シクロを漕ぐのは、 南国の男たち 皆、黒く焼けている 綾子は途方に暮れた 先ほどから一歩を歩み出そうと思うのに 歩道からおりて 一歩、車道におりた瞬間、 ビィーと無遠慮にクラクションを鳴らされる まるで綾子をベトナムが拒否するかのように
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