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目的のカフェに向かって、青年はホアンキエム湖の遊歩道をゆっくりと歩き出した
綾子は青年のほんの少し後ろを歩く
先ほどまでの喧騒とはうってかわって
ホアンキエム湖の遊歩道には、等間隔でベンチが置いてあり
湖のまわりは、バイクが行き交う道路なのに、
一歩、湖に近づいただけで
流れている空気が異なっているように綾子は感じた
湖のベンチにはカップルが座りなにやら秘密の会話をするかのように
頬を近付けあっている
その次のベンチには散歩を終えてくつろぐ老人
その次のベンチには若いビジネスウーマン風のスーツの女性がくつろいでいるところに、なにやらおばちゃんが近付いていった
どうもおばちゃんは、このくつろぎの時間を利用して
足のネイルをしないか、と女性に交渉している
女性は最初はあしらっていたが、
色だけでもみてみてよ、というおばちゃんの迫力に負けて
女性は色を見はじめた
しばらくすると
色が気に入ったのか、一本マネキュアの瓶をつまみ、おばちゃんにさしだした
おばちゃんは瓶を受け取るとしゃがみこむ
どうも今からネイルが始まるようだ
いったい、いくらで値段交渉を終えたのだろうか、と綾子は気になる
先ほどのマスク売りのおばあちゃんといい、
ネイルのおばちゃんといい、
女性の方が働き者だというガイドブックの情報は正しい、と綾子は思う
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