手をひいてくれるのは

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青年は店内に入ると何かベトナム語でカフェの店員と話している そのあと、カフェの店員が青年と綾子を案内してくれた 案内された席は ホアンキエム湖を一望できる最高のシート オープンカフェのそこは夕刻の心地よい風が綾子の心までも和ませる 青年は綾子のシートをひき、スマートにエスコートしてくれた 綾子は気恥ずかしさもあり 小さな声で ”Thank you”と言った ”With my pleasure"と青年が返事をして、 自分も席に着いた カフェメニューは、ベトナム語と英語の表記 青年は綾子にベトナムコーヒーを勧めたので、綾子と青年はベトナムコーヒーを注文した コーヒーが来る間、 綾子はホアンキエム湖を眺める 深緑色の湖は、とても穏やかで異国人の自分すら受け止めてくれている気がした コーヒーが運ばれてくる 綾子が、一口飲むと 「にがっ!」と思わず顔をしかめた 青年はそんな綾子を、口角を少しだけあげておかしそうに眺めている もしかしたら、青年はクスリ、と笑ったかもしれない 綾子はそれを見逃したかもしれない 綾子がコーヒーカップを置くと 青年はティースプーンで綾子のコーヒーカップの底をすくって見せた そこには、真っ白のとろっとしたものがコーヒーの底に沈んでいた 青年はその真っ白のものをティースプーンですくうと 綾子の口元に持っていく 綾子は驚いた でも青年は綾子に口をあけるようにジェスチャーをするので 綾子は口をあけその真っ白なものを飲み込んだ… 「あまい…」
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