第1話「竜国の歌姫」

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ドゥディナム商業区に流入する人々の数は、木にぶら下がる蜂の群れより、また、カエルが産んだ卵の数より圧倒的に多かった。  菊千代はかつてこれほどの群衆を見たことがない。  人の種類は大人から子供まで老若男女が揃っており実に様々だ。男らは一様に、服を面倒なことにわざわざ胸襟で縫い合わせているようで、身体の線に沿った窮屈な服を着て、自殺願望でもあるの乎(か)、はたまた誰かに飼われている証拠なの乎、首に紐を巻いて先端を臍(へそ)あたりまで垂らしていた。  それは色彩鮮やかで、色や柄によって名前を象徴しているように菊千代には見受けられた。
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