第1話「竜国の歌姫」

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 朝方に積み立てられた霜の貯金が真南に上がった太陽の光に溶けてチロチロと流れていた。  それは規則正しく陳列された石畳の溝で、複雑で小さな運河となる。  彼らが力を合わせれば太い水流となって動物の耳を震わせただろう。また、大海ならば荒波となって吠えただろうが、その小さな水の声は誰の耳にも届かなかった。  道行く人々の靴音がマイナーな声をかき消してメインストリートに響く。
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