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人の集う場所には音も集う。
世間話や愚痴、罵声や挨拶といった意味のある音から、レールの継ぎ目をまたぐ際に電車が放つガタンゴトンという独特な音、中身の詰まった缶を自販機が吐き出す音、冷たい溜息を吐くエアコンの室外機に、耳を澄ませば電線の中を流れる電流のせせらぎさえ聞こえてきそうである。
人間生活は騒がしい。
それもそうだろう。
世界の広さに比べれば全音符と六万五千五百三十六分音符と同程度に小さい島国のいち都市でさえ一〇〇万人もの人間が生活しているのだから、
「下界は賑やかじゃの」
と、鄙(ひな:都市部から離れた地)より来たりし少年が驚くのも無理のないことであった。
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