第1話「竜国の歌姫」

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   このおいしそうな少年は名を菊千代(きくちよ)と云った。 鄙より都に辿り着いた、いわゆる〝おのぼりさん〟というヤツだった。とんでもなく古く絶滅しかけの表現だが。    その〝おのぼりさん〟の目は都にあるもの全てが目新しく映って見えた。    菊千代はまず地面がないことに驚いた。都ではところどころに植栽されている緑を除いて、その殆どが明日負亜瑠都(アスフアルト)か紺栗意図(こんくりいと)に覆われており、土色の大地が見えないのである。
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