再会

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再会  いつのまにか窓の景色は、懐かしい町並みを映していた。  暗い夜だった空は明るい朝へと姿を変え、揺れるバスがゆっくりと移動していく。  心地良いゆりかごにも似た感覚が、俺の体を揺らしていた。  静かだ。  バスのエンジンの音だけが、耳の底に触れている。  乗客の話し声も聞こえない。  いや、並んだ空席を見る限り、バスの乗客は俺一人だけのようだった。  やがてバスは停車する。  電光掲示板の文字は終点。  俺はバスを降りると、懐かしさを確かめるように歩いた。  何もかもがあの頃のままだった。  汚れた壁の映画館。  今は、戦隊ヒーロー物の映画を上映しているらしい。  ポスターに、子供の好きそうな三人組のヒーローがポーズをとっている。  薄暗い店内の文房具屋。  店主のおばあちゃんは元気にしているだろうか。  ああ、あれは、無人の工場跡だ。良く鬼ごっこをしたっけ。 (だれと?)  誰と?  突然、鈍い頭痛が俺を襲った。  誰と? 誰と、鬼ごっこをした? 「信一」と言う名前が思い浮かぶ。  信一は小さな頃からの腐れ縁だ。  だが、もう一人。もう一人いたような……  その時、俺は気づいた。  ……なぜ、誰にも会わないのだろう。  昔の知り合いの一人くらいには、どこかで会いそうなものだと思っていたが。  いや、それ以前にそもそもおかしい。  人が、一人もいないじゃないか。  今まで歩いて、誰も見かけていない。  通行人も、誰も。
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