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「人対人? 意味が分からないよ。なんだよ、それ。」
「ようするにだな、CHI-3、バグが起きるまで人が操ってた。お前と同じように、他の部屋で同じ装置に繋がってた人間が。」
俺は信一の顔を見た。何、言ってんだよ。それ。
「なんだよ、それ。知らない人に、俺は話しかけてたのかよ。」
「いや、操作してた人なんだが、お前も知ってる人だよ。
もっとも、小さい頃交通事故で大怪我したとかで、15歳まで外国の病院に行ったり転々としてて大変だったみたいで、小さい頃の友達には死んだと思われてたらしくてさ。まぁ、俺もそうなんだけど。」
俺は信一の声を聞きながら足を止めた。
止めざるを得なかった。
信じられなかった。
「……おい、ここって、現実世界だよな。」
「言っておくがお前のスケッチだけじゃ、あそこまで詳細に再現なんて出来るはず無いからな。まぁ、後はお前に任せるさ。じゃあ、また後で。」
信一はそう言うと、手を軽く振りながら行ってしまった。
呆然と立ち尽くす俺を置いて。
俺の目の前には、白いワンピースの、女性がいる。
肩までのストレートヘアー。
そばかすの痕。
丸いかわいい鼻。
眼鏡。
彼女は、あの場にいた、どの彼女よりもリアルに笑うと、言った。
「久しぶりだね、シュウちゃん。」
(了)
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