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あの子。サワちゃんは、俺と信一が小学生の時、交通事故で、救急車に運ばれて、俺たちの世界からいなくなってしまった。
ひどい事故だった。
俺と信一の目の前で、サワちゃんはトラックに轢かれた。
血がたくさん流れて、大人達が騒いで。
気が付いたら、俺たちはサワちゃんを失っていた。
ああ、そうだ。今、目の前にいるのは、俺の中にあったサワちゃんの面影だ。
忘れられなかった。
この胸を刺すような残酷な懐かしさ。
この感情は恋とは違う。
だけれど、忘れることが出来なかった。
思い出に残るサワちゃんが、もし成長したら。
もし、俺たちと同じ世代になっていたらと。
そう思って、俺はデザインを信一に提出した。
肩までのストレートヘアー。
顔に残るそばかすの跡。
丸い鼻。
眼鏡。
絵は得意だった。だが記憶は劣化していく。
時間と共に風化し、おぼろげになっていく。
だから必死だった。
いつまでもその少女のことを覚えていることを、恥ずかしいと思う暇さえなかった。
いや、そんな感情など排除していたと言った方が近いのかもしれない。
ひたすらに、もう一度、もう一度と、再会を願った。
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