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俺のスケッチと信一の組んだコンピュータープログラムで甦った少女。
空想少女。CHIタイプの3番目のデザイン。CHI-3型。
『シュウちゃん、久しぶりだね。』
「ああ、久しぶり。」
笑うCHI-3が、そっと俺の手に触れる。
リアルだ。
体温があり、肌の柔らかさがあり、心を落ち着かせる愛しさがそこにあった。
「会いたかった。君を、ずっと探してたんだ。もう、何年も、ずっと。」
『私も。ずっとどうしてるのかなって、どんな大人になってるのかなって、そればっかり思ってた。』
ああ、どうして俺はこの世界に来た目的を今まで見失っていたのだろうか。
現実世界の俺は、意識を失ったまま機械の中で、静かに眠っている。
この世界に移動する時に、何か起きたのだろうか。
俺は空を仰ぐ。
リアルだが、どこか硬さのある空。人のいない無機質な空間。
不安になった俺は彼女の手を握り、その体温と柔らかさを確かめた。
ああ。このままここにいられれば、どんなに幸せなのだろうか。
だが、幸せは続かないらしい。
それは突然のことだった。
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