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俺が目覚めたのは、プログラムにバグが走ってから数分後のことだったらしい。
数分。ようするに何の問題も無く正常に戻って来れた。
俺は体中を覆うプロテクターを外し、ヘルメットを脱ぐ。
俺の名前を呼ぶ信一の声が聞こえた。
「シュウ、心配したぞ。もう二度とやらないでくれよ、頼むから。」
「ごめん、信一。」
俺はその時になって、信一が泣いていたことに気づき、それから笑った。
「ごめん。信一。」
俺はもう一度謝った。
「良いさ。無事だったんだから。なあ、シュウ。少し、歩こうぜ。」
信一はそう言うと、立ち上がった俺と共に部屋を出る。
外。
季節は5月の初めにある連休。
なんと暑いのだろうか。
気温は30度に達し、アスファルトがじりじりと焼けている。
直射日光で肌が少し痛い。
「あのな、黙っていたことがあるんだ。お前に話した恋愛シミュレーターのことで。」
「なんだよ、改まって。」
俺は、信一がどこか気恥ずかしそうにしながら話すのを聞いた。
「お前に試してもらっていたマシン、あれな、実は一人用の、いや、CPUを相手に恋愛を疑似体験できる恋愛シミュレーターじゃないんだ。
実はそいつの方は結構前に開発が完了しててな。市場にはまだ出てないけど。
で、お前にテストプレイしてもらったのは、今、開発中の新しいマシンで。
ようするに、遠距離恋愛中のカップルをターゲットにした人対人の恋愛シミュレーターなんだ。」
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