手紙

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月一度の診察では衣服を脱ぎ、男性医師に身体を見せたり、患部を触られたりする。 今まで、通院は勿論、主婦検診さえ、まともに受けた事が無い為に私は必要以上に緊張して身体が強張ってしまう。 そんな様子を察して、看護師が優しく「大丈夫ですよ」と声をかけてくれる。 この看護師はちょっとメイクが濃いけど、人当たりが良い。 その言葉にホッとし、礼を言って診察室を後にする。 毎回その繰り返し。 おかしな話かも知れないけれども、医師に症状を訴える、触診され、不安げな様子を看護師に慰められる、その行程が毎月の私の癒しになっている。 人それぞれ、癒しを感じるツールは違うと思う。 ある人はエステだったり、買い物だったり、あるいはホストクラブとかも? 私の場合は、それがたまたま病院の診察室だっただけだ。 それから、理数系が全く出来なかった私は理系職の頂点とも言える医師に恐れに近い尊敬を抱いている。 世間では高給と見られがちな医師だが、それになる為の膨大な時間と費用、勉強量や仕事の過酷さを考えると決して見合う収入では無いと聞く。 だからこそ医師と言う職業を選んだ人達が立派に思えて来て、診察室に入ると緊張してしまい、先生に自分の症状をうまく説明出来ないでいる。
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