手紙

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主治医に病状を相談したり、身体を委ねるうちに、恋愛感情を抱く事を「陽性転移」と言うらしい。 ネットでその言葉を調べると、医師に陽性転移してしまった患者達のありとあらゆる悩み、質問がUPされる。 また、それとは逆に主治医との信頼関係が崩れたり、治療が上手く進まない事が原因で医師に逆恨みの感情を持つ事を「陰性転移」と言うらしい。 娘の亜里沙が通う学校でも、陽性転移らしき人がいた。 私より、少し年上の人。 私立小に子供を通わしている母親なので、余裕がある感じで身なりは良い。 が、あくまでも「年齢の割りには」「小学校の子供のお母さんにしては」と言う事だ。 亜里沙が週一で習っている英語クラスの教室の前で、授業が終わるのを待っていると急にその人に話しかけられた。 「ここで待つのは寒いし、来週の授業の時は、外のカフェでお茶して待ちませんか?」 感じは良かったし、何より同じ学校の保護者と言う事で 二つ返事で承諾をした。 娘達の学校の正門前にあるカフェでお喋りをして見て意外だったのは、その人が上品そうな外見とは違い、お喋りな事。 最近行ったレストランの話から始まり学校や担任への愚痴、ご主人と不仲な事や、とうとう彼女自身の恋愛話まで聞かされる羽目になった。
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