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重ねた唇から、狂おしいほどの愛しさが伝わってきて、訳もなく泣けた。
触れてくる指先の優しさに、もどかしさすら感じながら、溢れ出す愛しさに溶けた。
見つめてくる瞳の温かさに、テレながらも嬉しくて、恥ずかしさを押しとどめて腕を伸ばした。
名前を呼ぶ声も、好きを紡ぐ声も、愛を囁く声も。甘く蕩けるように切なくて、うっとりするほどに優しい。
全てに翻弄されながら、全てに応えたかった。
「…………ホントにいいの?」
「いいよ」
「……神父なのに?」
問いかけにゆっくりと頷いてから、頬に手を伸ばした。
「全部、捨てられる。……全部。……暁以外、いらない」
「一希……」
「……違うか。…………暁に、全部あげる」
言い直してから、笑ってみせる。
「あげるよ」
目を瞠るのに小さく笑ってから。
唇に、唇を寄せた。
「暁が好きだから、全部、あげられる」
紡いだ後で唇は、唇に塞がれて音を失くした。
幸せすぎて、死ぬかと思った。
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