再会

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俺は簡単に着替えると、車をコンビニまで走らせた。 ただ駐車場に停めるだけは忍びない。 適当に飲み物でも買うか。 お茶を手に取る。 結衣は…ミルクティーで良いか。 戻ると、結衣が車の横に立っていた。 「え…あれ?今日って…」 視線の先、確かに結衣が立っていた。 しかし、そこにいた結衣は俺でも分かるくらいお洒落をしていた。 まるで… 「今日はデートに誘ったの。」 はい? 嘘だろ? そんな事、聞いてない! 照れ笑う結衣は前に会った時よりも可愛いく見えた。 何より、巻いた髪が俺のタイプだ。 「なんだよ!それならそうと言えよな。」 「言ったら、断ると思ったから。」 う… それは図星だ。 俺はデートが苦手だった。 「そんな事ないよ。とりあえず、乗れば?」 咄嗟に嘘が出る。 こんなとこで嘘つく必要なんて無いのに。 器の小ささが出たな。 「紅茶、嫌いじゃない?」 俺は買ったミルクティーを結衣に渡す。 「ありがとう…紅茶、大好きだよ。」 ん? 大好きだと言う割には表情が冴えないが… 「で、どこ行くの?」 「水族館に行きたい。」 「い!?水族館?」 なんでまた水族館なんだよ… 俺は水族館も苦手だ。 「…ダメかな?」 し、仕方ない… 黒炎会について話す為だ。 「わかったよ。行こう。」 俺は車を水族館へ走らせた。 水族館が苦手なのには訳がある。 小学生の遠足の行き先が水族館だった。 俺は好奇心旺盛な子どもで、それがいけなかった。 その日は特別に、水槽を上から覗く体験が出来たんだ。 俺はもちろん飛び付いて参加した。 そして水槽を覗き込むあまり、そのままドボンだ。 またそれが大型水槽だったもんだから、マグロやサメなんかが泳いでてすっかりトラウマになってしまった。 今ではジョーズすら見られない。 無論、水族館は怖い。 「大丈夫か?俺。」 結衣に聞こえないように、開けた窓へ向かって小さく呟いた。
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