再会

5/7
前へ
/77ページ
次へ
すっかり話に夢中になっていたが、目の前には頼んでいたケーキが並んでいる。 「食べようか。」 「うん。甘いの平気なの?」 俺は甘党だ。 頼んだケーキもクリームがたっぷりのショートケーキ。 「むしろ好物だね。」 ショートケーキの食べ方にはこだわりがある。 イチゴは必ず最後に! たまに、イチゴを最後に食べると酸っぱいから嫌。 なんて奴がいるが、それは違う。 甘くなった口の中を最後にイチゴの酸味で締めるのが最高なんだ。 「イチゴは最初よね。」 同じくショートケーキを頼んでいた結衣は、そう言いながらイチゴをヒョイと食べた。 「な!?あ~あ。分かってないなぁ。」 「ふふ。イチゴは最後派なのね。ごめんなさい。」 ふて腐れる俺を笑いながらなだめる。 「クリーム、付いてるわよ。」 そう言うと結衣は指で俺の口元を拭いた。 その瞬間、唇に結衣の指が触れる。 あれ? まただ。 懐かしいような感覚… 「…なんか懐かしい。」 「え?」 「俺さ、昔好きだった人がいて、その子が結衣さんに似ている気がするんだ。」 こんな事、話すつもりなかったのにな。 「そう…何て名前の人なの?」 「名前は…あれ?なんだったかな…」 「名前も覚えていないなんて、それほど好きじゃなかったのね。」 「違う!!」 気付いた時にはテーブルを叩き大声で叫んでいた。 我に返りすぐに訂正する。 「あ、いや…ごめん、そうかも。」 「………。」 結衣は驚いたのか、黙ったまま俺を見ていた。 何故だろう。 名前が思い出せない。 「…そろそろ行きましょうか。」 少しの沈黙の後、結衣が口を開いた。 なんだか空気を重くしてしまったな。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加