はじまり

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「ただいまー…って、誰もいないけど。」 一人暮らしってのは、どうしてこうも独り言が増えるのか。 すっかり寂しい独身代表だ。 特にこだわりのない家具が並ぶ1DKのアパート。 今年で30歳になる崖っぷち20代。 ここが叔父の所有物でなければ、とっくに宿無しだ。 学生時代は良かった。 一端に夢もあったし、ちゃんと四大を卒業した。 最初に就職した会社が酷かった。 今で言う、ブラック企業。 部下を人とも思わない上司にこき使われる毎日。 俺は納得行かなくて、一度だけ楯突いた。 それが気に入らなかったんだろう。 上司が起こしたセクハラを俺の仕業にされた。 当の女子社員も弁護してくれなかった。 結果、俺はこんな生活をしてる。 シャワーを浴び、カラカラの喉を潤すために冷蔵庫を開ける。 「あ!クッソ!ビール切れてる!」 喉を潤すはずのビールが無い。 こんな事ならさっき買っておくんだった! 「畜生。本当ツイてねぇ。」 一人、悪態を吐く。 気分はすっかりビールだってのに。 幸せならこんな日もあるさ、と割り切るのか?
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