はじまり

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一先ず俺たちは連絡先を交換し、コーヒーを飲み終えた。 集会とやらは来月末。 丸々2ヶ月ほどあるな。 それまでにも出来ることはあるだろう。 「しかし、このネタが記事になったところで君が望む結果に繋がるかは微妙だぞ?」 「うん、そうかも。でも、それでも今よりは多くの人を救えると思うの。だから協力して。」 大きな瞳が俺を見つめる。 こいつは女神か。 「こちらこそ、よろしく。」 俺から誘ったからと会計を済ませ、俺たちは解散した。 実際、このネタが化けるかどうかは取材してみないとわからない。 俺はそのままアパートへ戻った。 コンビニへ出かけただけだってのに、時間食っちまった。 結局ビールはお預けのままだ。 結衣にもらった名刺を出し、載っているURLをパソコンへ打ち込む。 「これか…」 画面に自殺サイトのトップページが表示される。 てっきり、黒や赤の悪趣味なデザインかと思っていたが一見は企業のHPのようだ。 「黒炎会なんて、ネーミングセンス疑うぜ。」 ”第3回 自殺志願者集会について” トピックスの一番上にカーソルを合わせる。 こんな集会、3回も開くなよな。 定員数は6名。場所は自殺名所にもなっている樹海だ。 参加者は管理人である結衣が毎回精査して決めているらしい。 集会前に自殺されることを防ぐため、結衣自身も志願者に紛れて参加する。 今回は、俺も志願者のフリだ。 「付き合っていた女性を殺害、その後悔から自殺を考えています…と。」 結衣に指定された志願理由を打ち込む。 嘘でも気分が悪い。 何も犯罪者にしなくても良いのにな。 今日はこの辺で休もう。 窓の外は朝日が昇り始めていた。
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