記憶

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ーピピピピ!ピピピピ!ピピピピ! 「んー…朝…」 携帯のアラームの音で起きる。 前の会社を辞めてからも早起きが癖になった。 「黒炎会…。」 昨日あった出来事を思い出す。 結衣にもらった名刺を確認し、現実だと分かる。 夢じゃなかったんだな。 今思えば、どうしてあんな話に乗ってしまったんだろう。 怪しさ満天だ。 …まぁ、結衣が美人ってだけで儲けもんか。 どうせ暇だし。 「腹減った…」 そう言えば、昨日の夜は結局コーヒーしか飲んでない。 飯も食べ忘れた。 一人暮らし歴は長いが、自炊とは無縁の生活を送ってきた。 一丁前に揃えたキッチン家電が泣いている。 俺の朝飯の定番は近所の定食屋での朝定食だ。 寝起きの顔を洗い、簡単に着替えて腹ごしらえに向かう。 俺は、昨日出会った結衣の顔を思い浮かべていた。 大きな瞳に、筋の通った鼻、柔らかそうな唇。 文句のつけようのない美人だ。 …少なくとも、俺のタイプだ。 昔にも、似たような人に恋をした事がある。 顔はハッキリと思い出せないが、面影が似てる気がした。 だから、結衣とどこかで会った事があるように感じたのかもな。 「おつり20円ねー。」 定食屋のおばちゃんからお釣りを受け取る。 俺も、朝定食が似合う年になっちまったんだな。 ガラスに映る自分の姿を見て、ため息をつく。 いつの間に冴えない自分を受け入れたんだろう。 「嫌なニュースよね~。最近、こんなんばっかり!」 「え?え?」 「やだ!何?ニュース観てたんじゃないの?」 レジのおばちゃんは、俺が見ていた窓の上を指差した。 あ…テレビか。 「ゴメン、ぼーっとしてた。何のニュース?」 「ホームレスが遺体で見つかったて話!見つかったのは最近だけど、死んだのは数年前みたいね…」 テレビへ視線を移す。 死因は殴られたことによる内蔵損傷… 俗に言うホームレス狩りみたいなもんか。
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