第1章

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人は浅い眠りの中で何を夢見る トラウマと化した記憶をなぞるのか 腰に命綱をつけ 立山の峰に登り 斜面をなだらかに削り トンネルの上、雪崩防止柵を造り ロープが緩み、宙をぶらり 死を覚悟したあの瞬間 時が止まり 荒い息で助けを待ちわびて 現在(いま)も助けを待ちわびている 午前3時、乾いた汗にまどろみ タバコの苦さが心地よい 富山に10年住み 月1度の連休をもらい その時だけ街にくりだして あとは山暮らし 馴染みのスナックのママと 少し仲良くなり 浮世を流したこともあった 今はもう昔の話 息抜きも必要だった 途中からクレーンのオペに替わり 命綱をつけることは無くなったけど 人の命を預かる仕事 酒の量が一気に減った 山を離れて分かるトラウマ 現在(いま)、私は障害者のひとり 日々の糧は国が与えてくれる もう、若くはない それでも、日々の糧くらい 自分で賄おうともがいている
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