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時折私に向けられる目が胸の奥を掴んで、
忘れていた気持ちを思い起こさせようとする
それは私の白濁した思考を上手に変えて
”嵌めたい” とか、
”リードの直系だから” とか
そんな意識はいつの間にか薄れて
私はただ、彼が欲しかった
―――そっと、手を伸ばす
喉元をくすぐる髪に触れた時、
顔を上げた彼と視線が交わった。
そこに見えるのは
彼の本意でも真意でもなく、ぼやけた私
肌を滑っていた手が止まる
(……ずるい )
透明な瞳は私からは何の色も見えないのに
きっと今の私ははっきりとした色を帯びている
ふっとつかれた息が胸にかかると
彼の視線が下がった。
「―――――――――――」
端正な顔が近付いてくる
それが視界いっぱいに広がった瞬間、
僅かな声が漏れた。
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