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”――――どうして?”
朦朧とする意識の中、何度かそう訊ねられた。
何を訊ねているのか判っているのに
私は判らないふりをする
”お金が目当てなの” とか
”いい思いさせてくれそうだから” とか
そんな『答え』がぼんやりと浮かぶけれど、
その度に私は無意識に彼へと手を伸ばした。
それは本当に無意識で、
『 私の事が欲しいなら あげてもいい 』
ずっとそう思ってきた私は
男に手を伸ばすなんて事をしたことはなかった
何も言わず、ただゆっくりと彼へと手を伸ばす。
その度に大きな手が私の手を開いて
緩く指を絡めた。
込み上げる言い表せない感情に
ぐっと唇を噛めば、そこにキスが落ちて、
その繰り返しを何度しただろう
揺らぐ瞳の中で彼を見るのに
私にはその奥にある色は判らない
―――どうして?
あなたこそどうして、私を抱いたの?
……渡瀬 朔……
本当に掴めない、わからない人――――
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