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「…俺が…好きなの?」
まだ残る熱を逃がそうと、浅い息を繰り返す
それに混じって短い声が耳に届いた。
伸びてきた手が私の目尻についた髪を払い、
奥にある瞳を見つめる。
「―――――――――――」
『 好きだよ 』
聞き飽きた口説き文句
だけどそんな簡単な言葉も
彼の口から出てこないと判っていた
それに私も
その言葉を一度も口にしたことはない
相変わらず奥を覗こうとする瞳に、
私は僅かに目を逸らした。
何度か息をついて彼へと視線を戻すと、
口元を上げてにっこりと微笑みかける。
ここに来たのは成り行きに似た意思だったけど、
私は判ってる
手を取る相手はちゃんと選ぶべきだって
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