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(―――――――――――)
はっきりと心臓が音をたて始める。
緊張でも、怖さでもない、
何か違う別の感覚が私を包み始めていた。
一歩一歩、そちらへと踏み出す度に
視界の中の彼が大きくなって、
膝が触れる程の距離に立った時、
手首を引かれてゆっくり体が落ちる。
ギシリとベッドが上下に揺れ、
反転する視界の中
彼の手が私の頬に触れた。
息が混じる程の距離
そんな僅かな空間を挟んで
彼はただじっと私の瞳を覗く。
(……やめて )
何かを探ろうとするそれを
見返す事が出来ない私は、逸らすように目を閉じた。
波打つ心音を何度か聞いた時、
ワインの仄かな香りが鼻を掠め、唇に別の感触が落ちた。
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