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「どうして、来たのよ……
どうして、名を呼んだりしたの……」
ため息の後に漏れた声は、私の耳にだけ大きく響く。
あんな蔑んだ目をして
あんな言葉を投げたのに
”――――真白 ”
その声だけがとても澄んでいて、
(……渡瀬… 朔……)
水滴がガラスを伝ってゆっくりと流れていく
心の中で呟いた名前は、
声にならないのに喉の奥を苦くさせて
私はそれを誤魔化すように
止まることのない水滴をただずっと眺めていた。
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