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(――――――――――――)
一瞬思考が止まった私を置いて、
先に振り返ったのは男の方だった。
それを追うように向けた視線の先には、
思いがけない姿
その表情は暗くて読み取れない
だけどはっきりとした眦が私を見つめていた。
同時に生まれたのは戸惑いや躊躇い
でも、
「――――朔、」
もっと大きな感情が私を動かして、
呼んだことのない名を口にさせる。
「―――――――――――――」
掴まれた手から力が抜けるのを感じた時、
動かない足を急かして駆け出した。
――――息があがる
彼は私を見下ろすと、
手に持っていた傘を広げてこちらに傾けた。
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