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向かう先は予想がついている。
このまま真っ直ぐ歩くと
あと数分もすれば着くだろうか
街のざわめきが遠くに聞こえ出した時、
「あれから、あの男とは?」
静かに届いた声
それが仄かに漂う酔いを
一気に醒ましたような気がした。
腕を持つ手が僅かに震え、
何も言わない私の耳に規則正しい靴音だけが響く。
ここの角を曲がると駅で、
こっちの角を曲がると大通り
そんな交差点でふと足を止めた彼は
私を覗くように見つめて
「―――で? ヨリは戻ったの? 」
(……どうして……)
―――そんな事を訊くのよ
もう私に興味もないんでしょ?
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