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(―――――――――――――)
視線の先を辿ると
小さな美術館のような建物が見えた。
だけどそんなのはないこの場所では
大きな木々に囲われたその建物は誰かの家で、
先に降りた彼に続いて外へ出ると
大きく吹いた風がその木々を揺らす。
「何、ここどこ…?」
たじろぐ私をよそに
肩越しにこちらを見ると、
「実家、俺の」
と、何でもない風に口を開いた。
「――――はっ?」
思わず出た大きな声に、慌てて口元を押さえる。
タクシーの中で見た時刻は
もう深夜2時を過ぎたところで
覆った口元からゆっくりと手を外す私を横目に
彼は門戸を引いて中へと押しやった。
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