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第0話
その日の夜、一つの台風が日本の本州に上陸しようとしていた。
10年に一度と言われる台風で中国、四国地方の山間部は各地で孤立する集落が出る程だ。
「たっ大変だ、これを伝えなけりゃ村は全滅だ!」
泣きじゃくる子供たちを隣に乗せて車が一、二台通れるだけの峠道を軽トラで駆け下る老人の男性。
彼の服は帰り血で真っ赤になっている。
車を走らせる事20分程、ようやく麓の集落に車が到着した。
だがその村に人明かりは無く、どうにも人の手で破壊されたようにしか見えない家屋が並んでいた。
「どういう事だで………ここもダメだったか!」
車のライトをハイビームにして道の奥を照らすと、5m程ある人影が林を横切るのが見えた。
「お、鬼だ、鬼が出たんだ!」
老人の顔が凍りついた。
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