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(……それを言って、どうするの )
口にしてしまえば
胸の痛みが増しそうな気がして、小さく唇を噛んだ。
と、その時、
「……けど…、知ってる 」
思わぬ声に俯いていた顔が上がる。
(――――え…、)
開いた目に映るのは
相変わらず本意の読めない表情で、
呆然と眺める私を見ながら
目の前の唇がゆっくりと動いた。
「怜奈が俺を好きだって、知ってる
だけどその気持ちは
その歳特有の…錯覚だろ 」
(――――――――――――)
ドクン と心臓が音を立てた。
その音がどんどんと大きくなって
流れる血が騒ぎ出す。
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