怜奈と私

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ゆっくりと彼の前で拳を振ると、 どん と、鈍い音が耳に届いた。 (――――――――――――) 開いた瞳に映り込んだのは 胸を強く叩いて顔を上げる私 「……だとしたら…、  ――――あなたは最低よ 」 静かに呟くと ゆっくりと隣を通り抜けた。 彼の横顔が大きく振り返る。 それを視界の端に映しながら 唇を噛んで駅へと駆け出した。 ――――息が上がる 人気のまばらなオフィス街をひたすら駅へと走った。 ” その気持ちは  その歳特有の…錯覚だろ ”  喉の奥が、酷く苦い ―――重なる あの子に、あの頃の ”私” が
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