怜奈と私

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ふと時計に目を向けると17時50分 あと少しで何事もなく 今日も業務を終えようとしていた。 もう一度視線を落とせば さっき転がしたボールペンが視界の端に映って、 同時によぎる顔を追い出そうと 強く掴んだそれを走らせる。 あの日、私は呼び出した男と久し振りに寝た。 だけどその男が置いて帰った札をしまおうとした時、 スマホの不在着信に気付く。 画面に浮かんだ名前を見た瞬間、 襲った言いようのない感情に、咄嗟に履歴消した。 (――なんでよ………) ―――判らない   言い訳でもするつもりだった? 思い出すと気持ちがめちゃめちゃになりそうで、 かぶりを振ってもう一度ペンを走らせる。
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