怜奈と私

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「小川さん、明日のアポイントに変更が」 内線を切った長濱さんが私に向き直る。 囚われそうだった意識を引き戻されつつも、 ふっと別の顔が頭を掠めて、 『 ごめん、  週末に出張が入ってしまって―――』 数日前に富士川さんから届いたメール パブに行こうと約束していたけれど、 それが流れた事にほっとした自分がいた。 富士川さんは私にとって”特別”な人 それは間違いないのに、 私は―――― 「……小川さん? 聞いてますか?」 「――――明日、  11時の神沢新薬工業のアポイントが14時に変更で、  来社予定の南さんが林さんに変わって、  取りつぐ先が事業部、でしょ」 「……聞いてたんですね 」 心ここにあらずって感じだったのに と チクリと言う長濱さんに、 「当たり前よ」と、小さな笑みを浮かべる。
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