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展望デッキに出ると、
視野が一気に開けて夏の夜風が私の髪を撫でる。
まばらな人影を横目に
ゆっくりとフェンスへと近付けば、
遠ざかる飛行機が夜空に溶けて消えていった。
滑走路からの明かりが
フェンスに寄りかかる彼を照らして、
その横顔から目を落とした私は
タラップに繋がれた飛行機に目を向ける。
「もう、行った? それとも……」
「多分あれに乗ってるはず 」
指差された先に目を向ければ
丁度今飛行機が動き出した。
絶え間ない、緩やかな風が吹き抜ける。
滑走路へと向かう様子をただ眺める私の耳に、
風の音に混じって静かな声が聞こえた。
「……あの日…、
怜奈に俺を好きか、訊いた 」
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