怜奈と私

28/39
前へ
/39ページ
次へ
展望デッキに出ると、 視野が一気に開けて夏の夜風が私の髪を撫でる。 まばらな人影を横目に ゆっくりとフェンスへと近付けば、 遠ざかる飛行機が夜空に溶けて消えていった。 滑走路からの明かりが フェンスに寄りかかる彼を照らして、 その横顔から目を落とした私は タラップに繋がれた飛行機に目を向ける。 「もう、行った? それとも……」 「多分あれに乗ってるはず 」 指差された先に目を向ければ 丁度今飛行機が動き出した。 絶え間ない、緩やかな風が吹き抜ける。 滑走路へと向かう様子をただ眺める私の耳に、 風の音に混じって静かな声が聞こえた。 「……あの日…、  怜奈に俺を好きか、訊いた 」
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

482人が本棚に入れています
本棚に追加