怜奈と私

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「先に行ってて、  ちょっと化粧室に行ってから行くから」 「……そうですか…?  じゃ、お先です お疲れ様です」 受付を離れる長濱さんが見えなくなると、 脱力しつつ視線を落とす。 その視線の先に映り込んだ黒いボールペンに 知らず知らずため息が漏れて、 ( ……びっくりした… ) こんな所まで乗り込んで来るなんて 思いもしなかった。 (……けど、勝手に言ってるだけだし…) ―――無視して帰る? そんな考えがよぎるけれど あの子の目は混じり気がなくて とても真っ直ぐで、 「……はぁ、」 私は盛大なため息をこぼすと、 行き場のない思いのままボールペンを指先で弾いた。
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