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と、少し先にいた彼が
こちらを振り返って立ち止まる。
それと同時に私の足もそこで止まった。
( …その顔……)
少し目を細める表情は、
本当に腹が立つ程いつもと変わらない
赤い頬を見られたくなくて
むくれながら目を逸らすと、行き交う人を眺める。
傍を何人か通り過ぎた時、
ざわめき混じりに離れていく靴音が聞こえた。
その音が聞こえなくなると、
私は大きな息をついて後ろを見上げる。
観覧車が街の明かりに華を添えていて、
私の足元から薄い影が伸びた。
彼へと届きそうで届かないそれに、
(あー、 本当にもう……)
私は内心声を荒げて影から目を外すと、
足を速めた。
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