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画面は変わり、東京タワーに上った二人は
黄昏時の東京の街並みを見下ろしている。
完全に日が沈んで夜の帳が降りたころ、
男がおもむろにジャケットの内ポケットから
長細い小さな箱を取り出した。
画面の中の男は
『誕生日おめでとう』と言いながら
それを相手役に手渡す。
大きく目を開いた女優が
感極まりながら箱を開けると、
その中から出てきたのがまさかのボールペンで、
私は思わず咳き込みそうになった。
『ありがとう…!
――――え?
コレ私の名前じゃなくて…蓮の名前入ってるよ』
『そう、
仕事中でも俺が近くに感じられるように』
そんな歯の浮くような台詞を聞きつつ、
まさに職場で使っている自分がいたたまれなくて、
(……この映画… 心臓に悪いわ )
思わず額を覆ったと同時に
彼の肩が僅かに揺れたような気がした。
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