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外へと一歩足を踏み出すと、
大きく吹いた風が髪を揺らす。
空を仰ぐと、
さっき映画で見たのと同じ黄昏の中に、
一段と映える光りが見えた。
( あ……)
それはこの辺りでも一際目を引くシンボルで、
当てのない私はそちらへと歩き始める。
「……ねぇ、ここには来た事はある?」
何となく訊ねた私に、彼は少し間を置いて、
「最後に来たのは…確か2週間前」
「…え、」
意外な答えに思わず横顔を見上げると、
「怜奈に引き摺り回されてたから
―――会うといつもの事だけど 」
「…そう 」
次第に足取りが重くなって、俯きそうになる。
胸に迫る言いようのない感情を誤魔化すように、私は遠くへと目を移した。
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