471人が本棚に入れています
本棚に追加
「――――ハッピーゴンドラって知ってる?
ひとつしかない紫の観覧車が
そう呼ばれてるんだって」
前を並ぶカップルの声につられて上を見上げると、
確かにたった一つだけが紫色をしていた。
だんだんと近付くそれを眺めながら
(……って、あれ……)
まさか と、
そのゴンドラと並んだ順番とを照らし合わせていく。
(―――もしかして……)
「……あっ!
紫のやつ、私たちだよ!」
自分の番だと思った時、
すぐ後ろで上がる声に思わずもう一度上を仰いだ。
(―――え?)
よくよく数えると確かに一つ後ろで、
別に乗りたかった訳じゃないけど
何となく肩が落ちる。
「次の方、どうぞー」
促されるままにチケットを渡して中に乗ると、
ガチャンと金属音がしたと同時に
ゆっくりと上昇し始めた。
最初のコメントを投稿しよう!