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何か言葉を紡ぎたくても叶わなくて、
軽く胸を叩けば反対の手で緩く握られる。
頭の中は否定の言葉ばかりが流れるのに、
手を伸ばす事も振り払う事も出来なくて
動けない
ただ彼に触れられた耳が熱くて
瞼の裏がぐらぐらと揺れてるような気がした。
体中が徐々に火照りだした頃、
――――ガチャリ
急に届いたのはこの空間を割るような、硬い音
それと同時に吹き込んだ風が私を撫でて
咄嗟に瞼を開けた。
「――――――――――――――」
彼の肩越しに見えるのは酷く困った顔の係員と、
その隣にはこれに乗ろうとしてるカップル
そしてその奥に並んでる人たち全員と目が合ったのは
時間にすれば、たった数秒
だけどその僅かな時間で
全身の血が一気に沸き返る。
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