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「あと これ、
喉乾いたら言って」
言いながら鞄を開いて
ミネラルウォーターを少し覗かせると、
彼はそれを横目にふっと笑って、
「…なに、
その水は毒でも入ってる?」
その瞬間、浮かべていた笑みが消えて
代わりに眉間にしわが寄る。
「…本当、つくづく失礼な人ね
私だってそれくらいするわよ 」
うろんな目を向けてボトルをしまおうとした時、
彼はハンドルから左手を外して、
「 今、それが欲しい 」
「……なにそれ…
ほんっと訳判らない 」
毒づきながら差し出す私の手に
彼の手が触れる。
それをゆっくりと口に運ぶ様子を目で追うと、
射し込んだ光が彼の髪が薄く透けさせて、
不覚にも心臓が跳ねた。
(…ちょっと、もう……、)
何をしても無駄に目を引くなんて、
始末に負えない
私はその横顔から視線を外すと
少し熱くなった頬を見られまいと窓の外に目を向けた。
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