かりそめのデート

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彼の背中に手を伸ばして、指先でシャツを引く。 ぴんと張ったそれが瞳に映ると同時に 足を止めた彼がゆっくりと振り向いた。 …もう判ってる わざと引っかかってやるわよ そうしたらあなたは―――― 何も言わずに顔を上げると、 彼は目を細めて微かに口元を上げた。 (―――ホラ やっぱり ) 私も彼と同じように目を細める。 だけど口は思い切り曲げて先を歩き出した。 「……で?   次は、なに? 」 少しして靴音が迫り、 真横から届いたのは揶揄を含んだ声 (……本当にこの人は……) 「…もう何も考えてないわよ 」 目を見ずに足を速めると、 そんな私の少し後ろで 彼が微かに笑ったのが聞こえたような気がした。
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