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左指に触れられたのは随分と前に、一度
だけどこんな風にされるなんて不意打ちだ
「……もしクビになっても…、
あなたのところじゃ働かないわ
富士川さんに頼むからいいわよ」
ガラスに映る自分の顔は酷く歪んでいる。
「……富士川さん、か 」
少しして届いたのは何かを含んだような、静かな声
その物言いも予想外で
ほんの僅かに胸が軋んだけれど、
それに気付かないふりをして遠くに目を移した。
( やめてよね 本当に )
引き摺られたくない
―――気まぐれにそんな風にしないで
それから私は何も言わず、
ただ流れる景色を瞳に映していた。
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